当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0201
「種種(しゅしゅ)」「色色(いろいろ)」「嬉嬉(きき)」「縷縷(るる)」など、同じ漢字を重ねてその状態や動作をいっそう明らかにした熟語を、ひとまとめにして呼ぶ呼び方はありますか?

A

こういう熟語のことを呼ぶ呼び方としては、あまり一般的ではないのですが、「重言(じゅうげん)」という言い方があります。
しかし、「重言」には、「馬から落ちて落馬する」式の、同じ意味のことばを重ねた表現という意味もあります。また、漢文の世界では、重大な意味をもつことばを指すことがあるなど、複数の意味があります。それを避けてか、「畳語(じょうご)」と言ったりすることもありますが、こちらもあまり一般的な用語ではありません。
ところで、漢字の世界では、「重言」と似たようなものとして、「双声(そうせい)」とか「畳韻(じょういん)」とかいうものがあります。「双声」とは、たとえば「颯爽(さっそう)」とか「磊落(らいらく)」のように、最初の子音を共有する2つの漢字を並べて作られた熟語のことをいいます。「颯爽」の場合はSが、「磊落」の場合はLが共通しているわけです。
「畳韻」というのはその逆で、最初の子音ではなく、その後に続く部分を共有する2つの漢字を並べて作られた熟語です。例を挙げると「爛漫(らんまん)」はANの部分を共有していますし、「逍遥(しょうよう)」は、日本人の発音で説明するのはやや苦しいですが、IOUの部分を共有していると言えます。「重言」は、これらの発展した表現であると考えることもできるでしょう。
中国語というのは、この双声・畳韻をこよなく愛する言語です。それは、響きやリズムがよいからでしょう。漢詩などには、好んでこういったことばが使われるのはいうまでもありませんが、クモを表す「蜘蛛(ちちゅう)」は双声、トンボを表す「蜻蛉(せいれい)」は畳韻であることを考えますと、中国語がいかに響きやリズムを大事にしてきたかが実感されるのではないでしょうか。

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