以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0507
「郵便」や「定期便」などに使われる「便」は、どうして排泄物の意味でも使われるのですか?
A
「便」の一番基本となる意味は、「支障がなくて都合がいい」だとされています。「便利」「便宜」や「簡便」といった熟語が、その代表的なものです。「交通の便がいい」なんていう言い方も、この延長線上で理解することができるでしょう。
この漢字を「定期便」「発着便」というふうに輸送手段の意味で使うのは、そこから発展した日本独自の用法です。また、「便箋」「郵便」のように手紙の意味で使うのも、どうやら同じく日本独自の用法のようです。
さて、問題はこの「便」がどうして排泄物の意味になるのか、ということですが、例によって残念ながら詳しいことはわかりません。この意味の「便」は、中国の古典にも用例があるようですから、日本語独特の用法というわけではなさそうです。「するりと出る」つまり「支障なく出る」からだ、という説があるにはあるのですが、常に「するりと出る」わけでもない私としては、全面的に賛成とはまいりません。ただ、出てくれないとそれはそれは「都合が悪い」わけですから、やはりこの説にもそれなりの真実があるようにも思われますね。
ちなみに、「便」にはビンとベンの2つの音読みがあって、輸送手段や手紙の場合にはたいていビンと読み、それ以外の場合はたいていベンと読みます。しかし、「便乗」「穏便」のように、輸送手段・手紙に関係なくともビンと読む例もあります。両者の違いは、意味の違いに基づくものではないと考えた方がよさそうです。