以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0503
「祭」という漢字の右上の部分は、「又」なのですか?
A
「祭」は、成り立ち・字源から眺めると、なかなかおもしろい漢字です。「示」は、「神」や「社」の左半分、いわゆる「しめすへん」と本来は同じもので、宗教儀礼に関係することを示しています。左上の部分は、「肉」が変形したもの。Q0023でご紹介したような、「腹」や「胸」「肺」に使われている「月(肉)」と同じです。
ご質問にある右上の部分は、「又」に違いありません。漢字の「又」は、「取」や「受」に典型的に見られるように、本来は右手の象形です。つまり「祭」は、右手で肉を持って、神様にお供えすることを表した漢字だとされているのです。
そのような事情もあって、手書きの場合、「祭」の右上の部分は「又」と同様に、図の左側のように赤丸の部分を突き出して書くのが一般的です。ただし、明朝体活字では事情が違って、図の右側のように、ここを突き出さない方が一般的なのです。おそらく、活字の場合には、ここを突き出すと「示」と重なりかねないのが、嫌われたのでしょう。
これもまた、手書きと活字との間で、漢字の字体に微妙な違いがある例の1つだと言えるでしょう。これまでも、Q0029で「衣」、Q0118で「比」、Q0385で「北」などの例を紹介してきましたが、アルファベットに筆記体とブロック体があるように、漢字でも、手書きと活字は別のものだと考えた方がいいのです。