当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0469
「暴」という漢字の成り立ちについて、教えてください。

A

いろいろと調べてみたところ、どうもこの漢字の成り立ちについては、よくわからない部分が多いようです。
046901一般に、漢和辞典を調べると、この漢字の篆文(てんぶん。篆書)としては、図のような形が掲げられています。なんとも好奇心をそそる、奇妙な形をしていますが、この篆文が何を意味するのかについては、諸説紛々です。
その諸説ある中のいくつかに共通しているのは、この字が動物と何らかの関係を持っている、ということです。動物といっても、動物園に出かけて見るような、ほのぼのとした癒し系のイメージを抱いてもらっては、困ります。この字は、動物の死骸を太陽の光に当てて乾かすようすを表している、というのです。
「暴」に「日」が含まれているのはそのせいで、この字は本来、太陽の光に当てて乾かすことを表していたと言います。現在、私たちが使う用法では、「暴露」の「暴」がこれに当たり、訓読みすれば「さらす」となります。
「暴」という漢字を目にしてだれもがすぐに思い出すのは、「暴力」の「暴」、訓読みでは「あばれる」となる用法でしょう。こちらの用法は、「さらす」から転じて生じた用法のようです。ちなみに、「暴」という漢字は、「さらす」という意味の場合は音読みではバク、「あばれる」の場合はボウと読み分けますから、注意が必要です。
いったい何のために、動物の死骸を日にさらす必要があるのか。そこには、古代中国の人々の宗教上、あるいは生活上の習慣が投影されているのでしょう。漢字とは、単にことばを書き写すものだけに止まらず、古代の人々の生活を今に伝える、タイムカプセルでもあるのです。

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