以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0454
「脱衣室」と「脱衣場」、この「室」と「場」の使い分けは、どのように考えればいいのですか?
A
こういう疑問を抱いたときには、他の例をいろいろと考えてみることをおすすめします。「会議室」と「会議場」、「展示室」と「展示場」、「浴室」と「浴場」といった具合です。
こうやって比べてみると、「室」と「場」の違いが、なんとなく見えて来ないでしょうか?「室」はこじんまりとまとまった感じ、「場」は広々と開放された感じがありそうです。ですから、どんなに狭くても「宴会室」ではなく「宴会場」と言っておいた方が、宴会らしい雰囲気がするものですし、ロケットを打ち上げる実験などするならば、やはり「実験室」よりも「実験場」の方が安心できるというものです。
実際、「場」は「土」へんが付いているとおり、本来は土地に関係する意味を持った漢字です。「室」の方には「宀(ウかんむり)」が付いていますが、「ウかんむり」は本来、「家」に関連する意味を表しています。つまり、本来の意味からすれば、「場」は屋外、「室」は屋内という違いがあるのです。
もちろん、現在では、「場」を屋内に用いることもよくあります。けれども、開放的な雰囲気を持つ「場」、こじんまりとしたイメージのある「室」という違いは、それぞれの漢字が本来持っていた意味に起因していると思われます。
ちなみに、「場」を屋内に用いることはできますが、「室」を屋外に用いることはまずないでしょう。「社長室」が屋外にあったりすると、それはちょっと、珍妙な会社ですもんねえ。