以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0434
「八十四名」は「はちじゅうよんめい」と読むのでしょうか? それとも「はちじゅうよめい」と読むのでしょうか?
A
漢字が2つ結びついて熟語になるとき、1つが音読みで読まれると、もう1つの漢字も音読みで読まれることが多い、という傾向があります(これに反するものを、重箱読み、湯桶読みといいます)。この原則は、漢字が3つ以上の場合も当てはめることができます。
「八十四名」の場合、「八」をハチ、「十」をジュウ、「名」をメイと読むのはみんな音読みです。そこで、「四」も音読みで読むのがよろしい、とういことになって、「四」の音読みシを使って、ハチジュウシメイと読むのが大原則、ということになります。
ところがこのシ、時には発音しにくいだけでなく、「二」をニと読むのと紛らわしい、というようなこともあって、あまり使われない読み方なのです。そのあたりの事情は、「七」の音読みシチが、イチと紛らわしいのであまり使われないのと同じです。
「七」の場合は、音読みシチの代わりに訓読み「ななつ」から生まれた「なな」がよく使われます。そこで、「四」の場合も同様に訓読み「よつ」から生まれた「よ」を使えばいい、ということになります。「八十四名」を「はちじゅうよめい」と読むのは、そういうふうにして生まれたものと説明できます。
ところが、この読み方にもまだ弱点があるのです。それは、これだと「八十余名」と紛らわしいですし、ときには「八十五名」と聞き間違えかねない、ということです。そこで、「三」の音読みサンに合わせて、「四」を「よん」と読む読み方が生まれたと言われています。ちなみに、この「よん」は、あくまで訓読み「よ」から派生したものなので、訓読みに分類されています。
というわけで、「八十四名」は、本来は「はちじゅうよめい」と読むべきですが、これも実は「はちじゅうしめい」から派生したもの。現在では、さらに派生した「はちじゅうよんめい」もよく使われる、と整理できるでしょう。いやはやまったく、ややこしいお話です。