以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0411
「巻」の部首は、小学校では「己」と教わったのですが、漢検では、「卩」(ふしづくり)になっていました。どうして違うのですか?
A
「巻」という漢字は、旧字体では「卷」と書きます。微妙に違う両者ですが、部首に関して重要なのは、図の赤い部分です。
右側の旧字体の赤い部分は、「卩」が変形したものです。字源(成り立ち)の上では、「卩」は、人がひざまづいている形だとされています。「巻(卷)」とは本来、人がひざまづいて、体を丸めていることを表す漢字だったのです。
ところが、部首を表しているこの大事な部分は、新字体では「己」へと変わってしまいました。その結果、部首としての「卩」は、字体の上から消えてしまうことになったのです。
これに対する漢和辞典の対応は、2つに分かれます。1つは、字体の上から消えてしまっても、本来の部首「卩」を守り続けようとする保守派・理想追求派です。もう1つは、「卩」は消えてしまったのだから、代わりに「己」を部首としようとする現状追認派です。ちなみに、小社の学習用漢和辞典『新漢語林』は、何を隠そう、後者です。
このコーナーで何度か触れてきたとおり、部首には、このように辞典によって解釈が異なる場合があります。そのような問題をはらんだ部首が、漢字検定で出題されることには、漢和辞典編集者としては首をかしげざるを得ません。
とはいえ、漢字検定で部首の問題が出題され続けていることは、動かしようのない現実。ここは、現状追認派らしく、「漢字検定」の受検の際には、漢字検定協会のテキストに従っておくしかないですね、と申し上げておくことにいたしましょう。