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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0403
数字の「0」を「○」を使って表すことがありますが、あれは漢字ではないのですか?

A

この種の問題を考える出発点として、漢字を構成する3つの要素、というものがあります。それらを形(けい)・音(おん)・義(ぎ)と言うのですが、形とは字の形、音とは読み方、義とは意味のことです。つまり、ある字形の下に、ある一定の読み方とある一定の意味とが結びつけられているのが、漢字というものなのです。
「〇」の場合、「ゼロ」あるいは「レイ(零)」と読み、意味としても「何もない」という意味を持っているわけですから、漢字の3要素を全て持っていると考えることができそうです。しかし、よく考えると、他の漢数字と離れて単独で用いられた時の「〇」は、果たして「〇」なのか、それとも数字の「0」なのか、はっきりとしないところがあります。「〇からの出発」と書いてあるとき、この「〇」はおそらくゼロと読むのでしょうが、ひょっとすると数字の「0」の誤植ではないのでしょうか?
そこで視点を変えて、10のことを「一〇」、500のことを「五〇〇」と書く場合を考えてみましょう。漢字の「一」や「五」の後に数字の「0」が続くのはおかしいですから、これらの「〇」は「0」の誤植ではないと判断すべきでしょう。ただし、「一〇」は「じゅう」、「五〇〇」は「ごひゃく」と読むわけですから、この「〇」にはさまざまな読み方があることになります。今度は漢字の3要素の1つ、「ある一定の読み方」があるという条件から外れてきそうに思われるのです。
こう考えてくると、どうやら「何もない」という意味の「〇」が単独で用いられることがあるかどうか、というのが判断の分かれ目になりそうです。単独の用法を認めた場合には漢字だということになり、そうでない場合は、漢数字だとは言えても、漢字だと言うことはむずかしいでしょう。
じゃあ、おまえはどっちだと思うのかって?バシッと快刀乱麻のお答えができればいいのですが、あんまりややこしいので、ここまで書いてみて、私はもう考えるのがイヤになってしまいました。後はみなさん、ご自分でそれぞれの判断をしてみてくださいな。

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