以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0399
「小雨決行」は、「ショウウケッコウ」と読むのですか、それとも「こさめケッコウ」と読むのですか?
A
うーん、むずかしい問題ですねえ。「小雨」は「ショウウ」「こさめ」のどちらに読んでもかまわない熟語です。ただ、そのあとに「決行」が続く場合にはどう読むのか?それが問題です。
いくつかの国語辞典にあたってみたところ、「小雨決行」という見出しはありませんが、「小雨(ショウウ)」のところに「―決行」という用例を載せているものが多く見られました。「決行」を「ケッコウ」と音読みする以上、「ショウウケッコウ」と読んでおく方がよい、という判断のようです。
ただし、現実には「こさめケッコウ」と読まれている例が多いのではないでしょうか。たとえば日本語変換ソフトのATOK13では、「こさめけっこう」は「小雨決行」と一発で変換されますが、「しょううけっこう」だと変換されません。ATOK開発者は、「こさめケッコウ」派のようです。
「小雨決行」を「ショウウケッコウ」と読んだ場合に困ることは、「ショウウ」だと漢字がイメージしにくいということです。実際、世間でよく見かける、「少ない」という字を使った「少雨決行」という書き方は、そのことをよく表しています。
「少雨」というのは、雨が少ないことで、「こさめ」とはちょっと違います。今年の夏は雨が少なかった、なんていうときに使うのが「少雨」の本来の使い方でしょう。それをなんとか強引に、一日の雨量のことに置き換えて理解するとしても、「少雨決行」と書いてしまうと、「雨が少なくても決行する」ということになってしまうように思われます。
つまり、雨が降っているときにしかできないたいへんな仕事を抱えた人たちとか、あるいは雨降りの中でしか楽しめないなにかを愛好するアヤシイ人たちがいて、「明日は雨が降るはずだけれど、もし本降りじゃなくて小降りだったとしても決行するぞ!」と言っているような感じがするのです。
まあ、世の中にはいろいろな人がいるものですが、そんな人たちに間違えられないためにも、「小雨決行」を「こさめケッコウ」と読んでもかまわないのではないかと思います。