以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0384
筆順はいつごろ決まったものなのですか? 甲骨文字のころからあったのですか?
A
Q0103でご紹介したとおり、現在、私たちが「筆順」と呼んでいるものが定められたのは、1958年の文部省著作『筆順指導の手びき』においてです。それ以前もそれ以後も、国家的な規模で筆順を定めたものは、日本にはありません。したがって、筆順が決まったのは1958年、ということができます。
とはいえ、それまで何の基準もなかったものが、この年に突然、定められたわけではありません。以前から、さまざまな流派があって行われていた筆順が、この機会に統一されたのです。
では、その「さまざまな流派」においては、いつごろから筆順を決めていたのか、ということになりますが、詳しいことはわかりません。しかし、書道という芸術が成立していく中で、筆順が意識されるようになったのは確かでしょう。
だれもが小学校で経験しているように、書道というのは、お手本を見ながらそれを忠実に写していくことで、基本を習得します。このとき、お手本が書かれた筆順を無視していては、お手本どおりの字を書くことは困難です。ここに、筆順が成立するきっかけがあったのではないでしょうか。
甲骨文字のころから筆順があったのかどうかは、わかりません。あったとしても、現在の私たちの「筆順」とはだいぶ違うものだったでしょう。私たちがふつうに意識しているのは楷書(かいしょ)の筆順ですが、楷書の成立は紀元3~7世紀ごろにかけてのこと。4世紀ごろには、書道の名人が書いたお手本を写すような習慣も生まれていたようです。とすれば、楷書の筆順も、そのころから漠然と存在していたのではないでしょうか。