以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0362
「大和」と書いて「やまと」と読むのはなぜですか?
A
「やまと」の語源については、諸説紛々としていてなかなか一致をみていないようです。ただ、古代、奈良県の一部のことを「やまと」と呼んだことは確かで、そこに本拠地を置いた勢力が日本列島全体を代表する政権となったことから、「やまと」は日本列島全体を指すことばとしても使われることになりました。
ところで、そのころ、中国では日本のことを「倭」と呼んでいました。なぜそう呼ばれたのか、これも確かなことはわかりませんが、この字は本来「なよなよしている」「従順な」といった意味ですから、当時の中国人は日本人に対して、そんなイメージを持っていたのかもしれません。
さて、訓読みとは、漢字が中国語として表す意味を、日本語に翻訳したものです。そこで、中国語の「倭」は日本語で「やまと」なのですから、「倭」に「やまと」という訓読みが生まれました。しかし、もともとは必ずしもいい意味ではない「倭」という漢字を、日本人は気に入らなかったのでしょう。やがて日本人は、自分たちを表すのに「倭(ワ)」と同音で、もっといい意味を持った「和(ワ)」という漢字を用いるようになります。その結果、「和=やまと」となり、今度は「和」が「やまと」と訓読みされることになりました。
その後、さらに「和」に「大」を付けた「大和」が誕生します。この場合の「大」は美称のようなもので、「立派なやまと」とでもいったところでしょうか。別に「立派でないやまと」があるわけではなく、「大」に本質的な意味はないのです。そこで、「大和」の2文字をまとめて「やまと」と読むようになりました。
日本の地名の漢字は、このように、複雑な過程をたどって成立したものが多いのです。古くからある地名であればあるほど、漢字の意味と地名とが、単純には結びつかないケースが多いですから、注意が必要です。