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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0356
以前、「帰省」のことをキショウと読んでいるのを聞いたような気がするのですが、そのような読みはありますか?

A

いろいろな辞典を調べてみましたが、「帰省」の読み方はすべてキセイで、キショウを載せているものは見あたりませんでした。やはり、キショウと読むのは間違いだと思います。
とは言っても、ありがちな間違いですよね。「省」という漢字は、「反省」のときはセイと読み、「省略」のときはショウと読むのですから、混乱するのも当然です。実際、小社の良きライバル会社「三省堂」さんのことを、サンショウドウと発音している人は、そんなに珍しくもないでしょう。
中国語では、発音も意味も異なる2つのことばが、同一の漢字に同居していることがあります。そんな漢字を音読みしようとすると、当然のことながら、意味に応じて音読みも2種類に分かれることになります。わかりやすい例は「楽」で、「音楽」を意味するときはガク、「たのしい」の場合はラクと音読みを使い分けるのです。
ところが、「省」の場合は、この2つの音読みは漢音と呉音の関係で、意味のちがいではありません。そこで、理論的にはセイと読もうがショウと読もうが、「完全な間違い」ではないことになります。
しかし、実際には、この2つの音読みには慣習的な使い分けがあるようです。「省」には、大きく分けて「かえりみる」「はぶく」「役所」の三つの意味がありますが、一般には、「かえりみる」の場合はセイ、「はぶく」「役所」の場合はショウと読むことが多いようです。
そこで、「帰省」とは、故郷に帰って両親を「かえりみる」ことですから、キセイと読むのがいい、ということになるわけです。
ただし、昔は「はぶく」の場合でもセイと読むこともあったようです。たとえば「省略」にセイリャクという読み方を載せている辞書もあります。つまり、この違いはあくまで慣習的なもので、厳密なものではありませんから、あまり杓子定規に考えすぎない方がよいようです。

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