以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0355
「夢」は草とは関係がないのに、どうして「くさかんむり」が付いているのですか?
A
Q0293で申し上げたとおり、「夢」とはもともと、「暗い」「よく見えない」という意味を表す漢字です。私たちが現在使っている「眠っている時に見るゆめ」という意味は、あとから付け加えられた意味なのです。そこで、「暗い」「よく見えない」という意味に立ち戻ってこの字を眺めてみたとき、何か気が付くことはありませんか。
そうです。この漢字の中には「夕」という字が含まれていますよね。
「夕」というのは「夕方」「夕べ」の「夕」ですから、「暗い」とか「よく見えない」という意味と似通っています。つまり、「夢」という漢字の中で、意味のキーポイントとなっているのは「くさかんむり」ではなくて、「夕」の方なのです。そこで、たいていの漢和辞典では、この字の部首は「夕」だとしてあるはずです。
では、「くさかんむり」は何なのでしょうか。その説明をしようとするとたいへんなことになってしまうのですが、ごくごく簡単に申し上げると、漢字の形が長い時間をかけて変化していくなかで、たまたま「くさかんむり」に似た形になってしまっただけのもの、ということになります。やっかいなことに、漢字の形には、このような偶然だってあるのです。
「くさかんむり」のようなメジャーな部首は、時にはこうやって、漢字の理解の邪魔をすることがあります。だまされないように、気をつけた方がいいですよ。