以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0009
「々」はなんと読むのですか?
A
この字は、実は「字」ではありません。アルファベットのような表音文字であれ、漢字のような表意文字であれ、「字」であるためには、少なくともある一定の「音」を表している必要があります。しかし、この「々」の場合、「人々」と書けば「びと」、「品々」と書けば「じな」という具合に、その読み方は千変万化、トランプのジョーカーのような役割を果たしています。
ではこれは何かというと、強いていえば「記号」でしょう。そこで、JIS漢字の世界などでは、これを「繰り返し記号」と呼んでいます。また、「々」は「仝」(「同」の異体字)の草書体から生まれてきたとされるところから、「ドウの字点」と呼ばれたり、漢字の「二」から生まれてきたとされるところから「ニの字点」と呼ばれたり、直前の文字を繰り返すことから「おどり字」と呼ばれたりしています。
ところで、小社の漢和辞典(たとえば鎌田正・米山寅太郎著『新漢語林』)を引くと、「丿」の部首のところに「々」がちゃんと出ています。「々」は字ではないのですから、漢和辞典に収録するのはおかしいといえばおかしいのですが、読者のみなさまからこの「記号」に関するご質問も多いので載せている、という次第です。