当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0327
「Y」という漢字があると聞いたのですが、本当ですか?

A

032701本当にあるんですね、これが。でも、別にローマ字の「Y」と何らかの関係があるわけではありません。びっくりするほど珍しい漢字、というわけでもなく、たとえば小社の学習用漢和辞典新漢語林』にも載っています。宣伝も兼ねて、たまには『新漢語林』の該当部分を掲げておきましょう。
この漢字、音読みはア、意味は「ふたまた」「あげまき」となっています。「あげまき」というのは、『新漢語林』ではイラストで説明してある、少女の髪型の一種です。つまり、「ふたまた」にせよ「あげまき」にせよ、先っぽが2つに分かれているものを、一般にこの漢字で表したようです。
ところで、ローマ字のように見える漢字は、ほかにどんなものがあるでしょうか?
大漢和辞典』を調べてみたのですが、あまり見あたりません。すぐに見つかったのは「|」という漢字で、これはローマ字の「I」とそっくりです。音読みはコン、「上下に通じる」というような意味のようですが、実際に用いられた例はほとんどなく、あんまりおもしろい話にはなりません。
ほかに挙げるとすれば、「丁」でしょうか。これは音読みがテイですから、ローマ字の「T」の親戚筋だと名乗っても、受け入れてもらえるかもしれません。
ちょっと昔の小説などを読んでいると、漢字の「丁」を使った、「丁字路」「丁字形」などということばに出会うことがあります。今ならローマ字を使って「T字路」「T字形」というところでしょう。つまり、漢字の「丁」はローマ字の「T」に駆逐されてしまったわけです。なまじっか似ているばっかりに、活躍の場所を奪われてしまって、かわいそうなお話です。
もっとも、「Tシャツ」は昔からローマ字の「T」で、漢字の「丁」が使われたことはないようです。ちなみに、「Yシャツ」の方は漢字にもローマ字にも関係なく、本来は「ホワイト・シャツ」だったのが、訛ったものだそうです。

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