以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0322
「相」という漢字の成り立ちが、辞書によって説明が違うのですが、実際はどうなのですか?
A
「相」という漢字を見てまず思い浮かべるのは、「相互」とか「首相」とかいったことばでしょうか。「相互」の場合の「相」は「たがいに」という意味、「首相」の場合は「たすける」という意味です。「首相」とはもともと、王様の仕事を助ける人たちの中で、一番偉い人をいうのです。
しかしこの字、本来の意味は「くわしく見る」で、「人相」などの熟語では、この意味で使われています。では、「木」と「目」とでどうして、「くわしく見る」という意味になるのでしょうか。
1つの説は、文字通り「木を目でくわしく見る」からだというものです。この説はとてもわかりやすいのですが、よく考えてみると、木を見るときにどうして「くわしく」なくてはならないなのか、疑問が残らないでもありません。
この説は、「相」をいわゆる会意文字として解釈しようとする説ですが、形声文字として捉える説もあります。
形声文字は、音を表す部分と意味に関係する部分とから成り立ちます。「相」の意味に関係する部分が「目」であることに異論はないでしょう。とすると必然的に音を表す部分は「木」だということになります。でも、「木」の音読みはモク・ボクであって、「相」の音読みソウ・ショウとは似ても似つかぬものです。
形声文字説は、ここで工夫をして、現在「木」のような形をしている部分も、大昔は違った形をしていて、その発音がソウ・ショウであったのだ、と主張します。ただし、その「違った形」にも諸説があるようです。
結局のところ、会意文字説にも形声文字説にも、一長一短があるようですね。
ちなみに会意文字説であろうが形声文字説であろうが、この字が「目」に関係する意味を持っていることには違いはありません。そこで、この字は通常、「目」の部首に分類されます。「木」へんではありませんから、注意してください。