以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0316
「献血」の「献」は、「南」と「犬」とでどうして「ささげる」という意味になるのですか?
A
漢字の成り立ちについて考えるとき、まず注意しなくてはならないのは、私たちが現在眼にしている形が、昔からの形であるのかどうか、ということです。「献」の場合、これはいわゆる新字体で、旧字体では「獻」と書きます。そこで、こちらの形を出発点にして考えていかないと、見当はずれな議論に陥ってしまうのです。
さて、「獻」の左半分は図のような形をしています。これは、「こしき」とか「かなえ」とかいいますが、要するに容器の一種を表す漢字です。この容器と犬とがどう組み合わさると「ささげる」という意味になるのか、と申しますと、ここから先は、大きく分けて2つの説があるようです。
1つは、犬の肉を容器に盛って、神様にお供えするところから「ささげる」という意味になった、という説。もう1つは、神様に供えものをする際、けがれをはらうためにまず容器に犬の血を塗ったところから、「ささげる」という意味が生まれた、という説です。
まあ、どちらにしてもかわいそうなのは、犬の運命。いかに神様のためとはいえ、殺されてしまうなんてあんまりです。もちろんそれは中国古代の話ですが、漢字の中には、現代に生きる私たちからするとびっくりするような、こんなお話を秘めているものもあるのです。