当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0268
「毒」という漢字には、なぜ「母」という字が含まれているのですか?

A

ごもっともな疑問ですね。漢和辞典を調べると、「毒」は「母」と同じ部首に収められていますから、どんな関係があるのか不思議に思うのも当然です。ただしこのご質問にきちんとお答えすることは、残念ながらできません。といいますのは、「毒」という漢字の字源についても、例によって例のごとく、さまざまな説があるからです。
026801一番伝統的な説明は、「毒」という漢字は、「屮」と図のような漢字から成り立つ、というものです。図の漢字はさらに、「士」と「毋」に分解されます。「士」は「立派な男性」という意味、「毋」はよく見ると「母」とは違って、「~ではない」という意味で、図の漢字は「立派ではない」「みだら」という意味になるそうです。それが「草」を表す「屮」と合わさって、「よくない草」「毒草」という意味になったのが「毒」という漢字だというのです。
また、「毒」は「生」と「母」から成り立つ、という説もあります。この場合の「生」は「生え始めた草」のことで、「母」は「子どもを産む」ことを表します。子どもを産む際に服用した強精剤の草のことを表したのが、「毒」だというのです。
026802ほかにも、「毒」は「髪飾りをつけた女性」の姿を現したものだ、という説もあります。この場合、「母」は女性の姿で、その上の部分が髪飾りということになります。たしかに、篆文(てんぶん)の「毒」という字は図のような格好をしていますから、これを見ていると、そんな雰囲気がないでもありません。その髪飾りが派手で毒々しいところから「毒」の意味が生まれた、というのが、この説の主張するところです。
以上、3つの説をご紹介しました。ある程度の大きさの漢和辞典なら、各漢字に字源の説明が載っているものです。字源に興味を持たれたなら、いくつかの漢和辞典の字源の説明を比較してみてください。きっと、おもしろいと思いますよ。

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