以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0261
パソコンで、たとえば「蒼」という字を楷書体で表示すると、「くさかんむり」の間が切れていることがあるのですが、どうしてですか?
A
そういう現象、たしかにありますね。私のパソコンには「楷書体(かいしょたい)」のフォントが2種類入っているのですが、「蒼」という字は図のようになっています。これはどうしたことでしょうか。
楷書とは、現在、私たちが手で漢字を書く際、ふつうに使っている書体のことを言います。「くずし字」ではないもの、と理解しておけばいいでしょう。パソコンに入っている楷書体フォントは、この手書き書体をまねしてデザインされたものです。
一方、「くさかんむり」は、もともとは草が2本生えていることを表す「艸」という字が変形して生まれてきたことから、昔は、「十」を2つ並べたような形で書いていました。しかし、時代が下るとともにそれがさらに省略されて、いま私たちが書いているような3画の形が主流となったようです。
そこで、楷書体で「くさかんむり」を書く場合には、3画で書くのがふつうであると言えるでしょう。実際、現代日本での漢字字体の規範である『常用漢字表』では、「くさかんむり」は全て3画で表示されています。つまり、4画の「くさかんむり」を使った楷書体フォントは、ちょっとレトロな雰囲気を醸し出すためにデザインされたものなのです。
出生届や入試の願書など、公的な書類には、よく「楷書で記入のこと」と指示があります。そんな場合には、「くさかんむり」は3画で書いておくのがよいでしょう。オフィシャルな世界にレトロな雰囲気を持ち込んでも、たぶん、のれんに腕押しでしょうからね。