以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0244
「胃」の部首は「月」ですか、「田」ですか?
A
もうだいぶ前、Q0023でお話したことなのですが、部首としての「月」という字形の中には、もとは「肉」であったのが変化したものが含まれています。これを「にくづき」といいます。
「にくづき」はその由来から想像がつくように、「肉体」に関係する意味を表す部首です。そこで「胃」の場合ですが、この漢字の意味が「肉体」に関係していることは、間違いのないところ。部首とはたいてい、その漢字の構成要素の中で意味的に一番重要な働きをしている部分ですから、この漢字の部首は「月(にくづき)」ということになります。
それでは、「胃」の「田」の部分は、いったい何を意味しているのでしょうか。古い字体の1つ、金文(きんぶん)では、この漢字は図のような形をしています。なんだか、できの悪いSF映画に出てくる火星人みたいな感じですよね。でも、火星人の足(いや、あれは手なのでしょうか?)にあたる部分が現在では「月」になり、頭にあたる部分が「田」になっていることは、容易におわかりいただけるでしょう。
では、この「火星人の頭」は何なのでしょうか?これは、胃袋の中に何かが入っている姿の象形だとされています。私はなまの胃袋を見たことはありませんが、この漢字のなりたちを知ったとき、なるほど、胃袋とはこんな感じだろうな、と思ったものでした。それ以来、お気に入りの漢字の1つであります。