当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0157
「改」という漢字の「己」の最後は、はねるのですか? どの活字を見てもはねていますが、漢字ドリルにははねないと書いてあります。

A

015701この漢字の場合、明朝体やゴシック体といった、一般によく使われる活字書体では、この部分ははねているのがふつうです。しかし、小学校の教科書などで使われる教科書体と呼ばれる活字書体では、図のように、この部分を止めたデザインになっています。おそらく、ご覧の漢字ドリルは、それに従っているのではないかと思われます。
さてここで久しぶりに、『常用漢字表』の「(付)字体に関する解説」という文書に登場していただきましょう。この文書については、Q0078Q0101でご紹介しておりますので、詳しい説明はそちらをご覧いただくことにします。
015702この文書では、図のように例示して、「改」の問題の部分は、はねてもはねなくてもよい、と断っています。寄らば大樹の陰。おそれおおくも内閣告示の『常用漢字表』ですから、その断り書きを無視するわけにはいかないでしょう。それに、この部分がはねていてもいなくても、別の字と間違うことはありません。したがって、お答えとしては「どちらでもよい」ということになります。
このような、漢字の字形に関する厳密すぎる指導は、かつての当用漢字の時代には盛んに行われたようですが、現在から振り返って見ますと、あまり意味のあることとは思えません。「改」の場合、「己」を書き終わったあとは「攵」の「ノ」の部分を書かなくてはいけませんから、むしろ少し上へとはねる方が自然でしょう。そのような自然の摂理を踏みにじってまで「はねない」とするような書き取りの指導は、もういい加減にしてほしいものです。

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