以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0229
ある本で「鷲鳥」と書いて「がちょう」とルビが振ってあったのですが、これでよいのでしょうか?
A
う~ん、それは誤植ではないでしょうか。
小社の『大漢和辞典』には、「鷲鳥」という熟語は収録されていません。「鷲」を調べてみても、やはりワシであって、ガチョウにつながりそうな意味は発見できませんでした。一方、小学館の『日本国語大辞典』にも、「がちょう」の項目に「鷲鳥」という書き方は載っていません。
そもそも、「鵞」をガと読むのは、「我」の音読みがガであるところから来ています。「我」と「鳥」とからなる形声文字なのです。同様に「鷲」の場合は、「就」と「鳥」とからなる形声文字で、「就」の音読みシュウから推測できるように、「鷲」の音読みはシュウです。従って、「鷲鳥」は音読みするならシュウチョウで、ガチョウはあり得ないのです。
しかし、インターネットで検索してみると、「鷲鳥」が意外とたくさんヒットするのです。ズラリと並んだそのサイトへ行って見てみると、「鷲鳥(Goose)」と書いてあったり、「クワックワッと鳴く鷲鳥」と書いてあったりするのです。ごていねいにガチョウの群れの写真まで載せてあるサイトもあったりして、これはもう、確実に「鵞鳥」の誤植だとしか思われません!
いやあ、ワープロ時代というのは、たいへんなものです。「がちょう」と入力して変換キーを押せば、「鵞鳥」と出てくるはずです。にもかかわらず、「鷲鳥」となってしまうのは、いったいどうしてなのか?このQ&Aコーナーで「細かいことにこだわらなくていいんです」を連発している私としても、今夜ばかりは「酒でも飲まないとやってられないよ」という気分です!