以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0214
「強力」という熟語は、キョウリョクと読んだり、キョウリキと読んだり、ゴウリキと読んだりしますが、どう使い分ければいいのですか?
A
これは、漢字の音読みのうち、漢音・呉音にまつわる問題です。長くなるといけないので、漢音・呉音については説明を割愛します。用語集を参照してください。
「強」「力」それぞれの漢音と呉音は、以下のようになっています。ふつう、2字の熟語は漢音同士、あるいは呉音同士で読むのが一般的です。そこで、「強力」の場合、ごくごく普通に考えますと、キョウリョクかゴウリキと読むことになり、キョウリキはあまり考えられません。
この熟語、現在では「力が強い」という文字通りの意味の場合、キョウリョクと読むのが一般的です。ただし、ゴウリキと読む場合もあって、その場合は山などで活躍する荷物運びの人のことを表します。
しかし、時間をさかのぼって古典の世界になると、「力が強い」場合もゴウリキと読むことがあります。呉音読みは仏教の世界に多いので、特に仏教関係の文献の場合は、ゴウリキと読む可能性の方が高いと思われます。ただし、小学館『日本国語大辞典』では、「ごうりき」のところに「強力・剛力・豪力」の3つの書き方を挙げていますから、読み方をはっきりさせるために後の2つの書き方をすることも多かったのでしょう。
さて、話を戻してキョウリキですが、先ほどあまり考えられないと申し上げたものの、実は、この読み方をするケースが私たちの身近にあります。そう、お料理で使う強力粉です。このことばはどうしてキョウリキコと読むのでしょうか。キョウリョクコだと、なんだか力が強すぎそうで、敬遠されたのでしょうか。
その理由はよくわかりませんが、ことばは法則通りにいかないということが、こんなところでも実感されるわけです。