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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0202
私は子どものころ、「鳴く」を小学3年で、「泣く」は中学1年で教わったように記憶していますが、なぜこんな簡単な使い分けを中学生になるまで学習しないのでしょうか?

A

すごい記憶力ですね。そのご記憶には、間違いがないと思います。
このご質問には、Q0145でご説明した「学年別漢字配当表」が関係しています。この表が最初に定められた1958(昭和33)年には、「鳴く」は小学校3年生で学習することになっていましたが、一方の「泣く」は、小学校では学習しないことになっていました。ご記憶どおり、というわけです。
しかし、この表に関しては、ご指摘のような、系統的な漢字学習に対する配慮が欠けているという批判が強く、1968(昭和43)年の「学習指導要領」の改定の際、「学年別漢字配当表」にも変更が加えられました。そのポイントは、2年生以降の各学年に配当されていた漢字のうちの何割かが、その前の学年で学習してもよいことになったのです。そして、これに従って前倒しに学習していくと、当然、6年生で学習する漢字が少なくなってしまいますので、「備考漢字」として新たに115字を、6年生で学習してもよい漢字に加えたのです。この改定に従った学習がされるようになったのは、1971(昭和46)年からのことになります。
さて、このとき、「鳴く」は2年生で学習してもよい漢字となり、「泣く」は6年生で学習してもよい漢字となりました。その後、1977(昭和52)年には、「学年別漢字配当表」はさらに改定されて、「その前の学年で学習してもよい」とされていた漢字は、正式に、「その前の学年で学習すべき」漢字に改められました。さらに1988(平成元)年にはまたまた改定が行われ、各学年の配当漢字に出し入れがなされて、現在に至っています。
その結果として、現在では、「鳴く」は2年生で、「泣く」は4年生で学習する漢字となっています。「学年別漢字配当表」も少しずつではありますが改善されているわけで、この「鳴く」と「泣く」の事例からは、そのことがよくうかがえると思います。

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