以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0197
「所」の部首は「戸」ですが、左にあるのにどうして「とかんむり」というのですか?
A
漢和辞典で「戸」の部首に属している漢字を探してみると、
「戸」「戻」「所」「房」「扁」「扇」「扈」「扉」
などが見つかります。これらを一目見ておわかりのように、「戸」という形が左、つまり「へん」の位置に来る例はきわめて少ないのです。一般によく使われている漢字としては、「所」だけだと考えて言い切ってしまってもいいでしょう。
そこで、「戸」が部首になるときの呼び名としては、昔から「とかんむり」あるいは「とだれ」というのが一般的だったようです。Q0086でもご紹介した室町時代末期の辞書『運歩色葉集(うんぽいろはしゅう)』では、「トカムリ」としてこの部首を載せています。
そこで「所」の場合も、部首は「とかんむり」「とだれ」と呼ばれるのが一般的なわけですが、たしかにこれはおかしな話です。長いものには巻かれろ式に生きていくのもいいのですが、それでは飽き足りないという方は、「かんむり」や「たれ」が付かない呼び名が欲しいところでしょう。
その願望を満たす呼び名としては、単に「と」と呼ぶか、「とびらのと」と呼ぶのがよろしいかと思います。どちらも、小学校の教科書や参考書などで採用されている呼び名です。