以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0159
「魚へん」に「比」と書いて、なんと読むのですか?
A
この字、『大漢和辞典』に出てはいるのですが、その説明は、「魚の名」とだけあって、なんという魚なのかは書いてありません。それもそのはず、詳しく解説を読んでいくと、鳥のような顔をして魚のようなひれと尾を持ち、石を打ったときのような甲高い声で鳴いて珠玉を生む魚、というのですから、これは中国古代の伝説の怪物の話。日本語としての名前がついていなくても、不思議はありません。
しかし、それで終わってしまっては、漢字文化資料館の名がすたるというもの。そこで、最近、古本屋で買い求めた『水産動植物漢和辞典』なるものを引っ張り出してきました。刊行は1957(昭和32)年、編者は西武男という、どうやら水産庁の官僚だったらしい人。全500頁のガリ版刷りで、水産関係の動植物の漢字表記を、幅広い文献にあたって収録したという、なかなか、眺めていて飽きない辞典です。
これによりますと、「魚」へんに「比」と書く字は、「かじか」という読み方があることがわかります。「かじか」には、カエルの一種と、魚の一種の両方がありますが、どちらかはわかりません。また、この字のあとに「目」を書いて、「かれい」という読み方もあるようです。目が片寄っている魚、というイメージがなんとなく伝わってきますよね。