以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0141
先日、「目」と書いて「さがん」と読む名字の方と出会ったのですが、どうしてこのような読みが生じたのでしょうか?
A
名字の読み方は非常にむずかしくて、なかなかはっきりとしたことが答えられないのです。そこで、以下は私の当て推量だと思ってお読みください。
いきなり話は古代の日本に飛びます。昔の日本は、武蔵の国、相模の国などというように「国」に分かれていましたが、古代においては、その国の政治を行うお役人のことを、「国司」(こくし)といいました。この国司には、おおざっぱに言って4つのランクがあって、そのランクの名前は、上から順に「守」「介」「掾」「目」と書かれていたのです。
一番上の「守」は「まもる」という意味ですし、「介」は「たすける」、「掾」も「たすける」という意味ですから、それぞれ、えらいお役人の官職名としてふさわしいと思われます。では、一番下っ端の「目」はどういう意味かというと、この字には、「頭目」などという熟語で使われるように、「人の上に立つ者」という意味があるのです。
さて、この「守」「介」「掾」「目」を、当時、「かみ」「すけ」「じょう」「さかん」と読んでいたのです。なぜこう読むのかについてはいろいろあるのでしょうが、ともかく、日本史ではこれを「四等官(しとうかん)の制」などと言っているようです。おそらく「目」と書いて「さがん」と読むのは、この「さかん」が変化したものではないでしょうか。
たしかに、「目」1文字だけで「さがん」と読む、と言われると、ちょっとびっくりするでしょう。しかし、その背景には、古代から続く長い長いいわれがあるのだろうと思われます。