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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0133
子どもが「十回」は正しくはジッカイと読むのだと習ってきたのですが、ジュッカイと読むのは間違いなのでしょうか?

A

国語辞典や漢和辞典を調べても「十回」ということばは、残念ながら載っていません。かわりに「十戒」とか「十干」なら載っていますので、それを見てみますと、やはり、ジッカイ・ジッカンを正しいとするものが多いようで、ジュッカイ・ジュッカンも参考として掲げているものもあるにはありますが、今のところ、少数派のようです。
「十」をジッと読むことには、きちんとした説明があるのですが、そのためにはまず、現在ジュウという音読みを持っている漢字も、昔は何種類かの微妙に違った音読みをされていたという事実を知っておく必要があります。高校生や社会人に向けて編集された漢和辞典には、音読みには旧仮名遣いが併記されています。それを使ってジュウという音読みの漢字をいろいろ調べてみると、ジュウのほかに、旧仮名遣いとしてジウ・ヂウ・ジフがあることがわかるはずです。
このうち最後の「~フ」という音読みがくせ者で、このタイプの音読みを持つ漢字の後に、カ行・タ行・ハ行などの音読みを持つ漢字がくっついて熟語を作ると、「~フ」が「~ッ」に変化してしまう、という音声上の法則があるのです。
つまり、「十」の場合、ジュウはもともとジフで、それが変化してジッになるわけです。これをジュッとしてしまうと、ジュウはもともとジュフだということになってしまい、古い発音と合わなくなってしまうのです。これが、多くの辞典がジッカイ・ジッカンなどを正しいとしている理由です。
しかし、現実問題として、かくいう私も含めまして、ジュッカイ・ジュッカンと発音している人が多いのも事実です。古い発音はともかくとして、現代人にとっては、ジュウからジュッへの変化の方が自然だからです。その事実を無視して、ジュッカイ・ジュッカンを「間違い」だとするのも、いかがなものかと思います。
とはいえ、ジッカイ・ジッカンにはきちんとした理論的な後ろ盾があります。テストで「十回」の読み方が問題に出たら、ジッカイと答えておくほうが無難です。採点する人がどんな考えの持ち主かはわからないわけですが、こんな簡単な熟語を問題にする人は、ジュッカイに×をつけてやろうと、手ぐすねひいて待ちかまえている人に違いないでしょうから。これも受験戦士の知恵といえましょう。

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