当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0079
「胡座」と書いて、どうして「あぐら」と読むのですか?

A

『大漢和辞典』で「胡座」を探してみると、「胡坐」という表記で、読みはコザ、現在、私たちが用いているのと同じ意味で記載があります。しかし、漢籍の出典が示されていないので、その限りでは、「胡坐」という熟語は、日本起源の可能性が高そうです。
一方、「胡座」と対になる「正座」を『大漢和辞典』で探してみると、やはり「正坐」という表記で、「威厳をもって座ること」というような意味しかなく、現在の私たちのイメージ通りの「正座」ではありません。これも、「胡座(坐)」という熟語が日本起源であることの傍証となるかもしれません。
そこで、国語辞典方面から「あぐら」を調べると、意外なことがわかってきます。『古事記』に出てくる「あぐら」とは、「胡床」と書いて、いまでいうところの椅子のことを表していたというのです。「胡」とはもともと異民族のこと。そこで、大陸から渡ってきた異民族の習慣であった椅子のことを、「胡床」と書き表した、という説明がなされています。
そうすると、もともと異民族の習慣=椅子を表した「あぐら」ということばが、日本民族の習慣=足を組んで地べたに座る、へと変化したことになります。それとともに表記の「床」は「座(坐)」へと変化したものの、なぜだか異民族を表す「胡」の方は変化しなかったわけです。
このねじれ現象に、なんだかユーモラスなものを感じてしまうのは、私だけでしょうか?

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