以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0056
漢字で数を表す時、一、十、百、千、万、億、兆、……となりますが、もっと大きい数を表す漢字には、どのようなものがありますか?
A
数を表す漢字にどんなものがあり、その漢字が実際にどんな数を表すかについては、実は諸説があるのですが、たとえば江戸時代の算術書『塵劫記』(じんこうき、吉田光由著、1627刊)によりますと、大きな数を表す漢字として、次のようなものが挙げられています。
一 いち 1
十 じゅう 10
百 ひゃく 100
千 せん 1000
万 まん 10000
億 おく 10の8乗
兆 ちょう 10の12乗
京 けい 10の16乗
垓 がい 10の20乗
数学が苦手だった人のために書いておきますと、「10の何乗」というのは、その「何」の数だけ0がついた数字、と考えてください。つまり、「億」は1の後に0が8つ、「兆」は0が12個付くわけです。
「垓」の上、10の24乗を表すのは、「じょ」と読む漢字なのですが、なぜだかこれは不遇な漢字で、『大漢和辞典』にも未収録、JIS漢字でもありません。そこで、画像で示しておくことにいたしましょう。
さて、大きな数字を表す漢字は、10の24乗くらいで終わりではありません。まだまだ続きます。
穣 じょう 10の28乗
溝 こう 10の32乗
澗 かん 10の36乗
正 せい 10の40乗
載 さい 10の44乗
極 ごく 10の48乗
ここから先は、漢字1文字ではなくなって、一種独特の世界を醸し出すことになります。
恒河沙 ごうがしゃ 10の56乗
阿僧祇 あそうぎ 10の64乗
那由他 なゆた 10の72乗
不可思議 ふかしぎ 10の80乗
無量大数 むりょうたいすう 10の88乗
天文学的数字とはよく言ったものですが、天文学の基本単位の1つに「光年」というものがあります。光が1年間に進む距離のことですが、これが約9兆5000万キロ。メートルに直して約9500兆メートル。100億光年でようやく約95垓5000京メートルにしかなりません。
上記の単位のうち、「載」までは古代中国人の、「極」以上は古代インド人の発想になるそうです。古代アジアの人々は、全く、想像を絶するというか、無駄というか、とにかくたいへんな数を考えていたものです。