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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0046
「望蜀の嘆」ということばをよく目にしますが。これは「ぼうしょくのたん」と読むのでしょうか。それとも「ぼうしょくのなげき」でしょうか。

A

小社『漢文名言辞典』(鎌田正・米山寅太郎著)によれば、このことばの意味は、「隴(ろう)の地を手中に収めた勝利に乗じて、更に蜀(しょく)の地を攻め取ろうと望むこと。一つの望みを達して、さらにもう一つと欲ばること。欲が深くて満足することを知らないことのたとえ」とあります。そして、「望蜀の嘆」の「嘆」には、「たん」とルビが振ってあります。
では、「なげき」と読むのは間違いなのでしょうか?
この問題を、送り仮名、という側面から考えてみましょう。内閣告示「送り仮名の付け方」(1973年告示、1981年一部改正)の「通則4、本則」には、次のように書かれています。

「活用のある語から転じた名詞…(中略)…は、もとの語の送り仮名の付け方によって送る。」

「なげき」は、「なげく」が転じて名詞になったものですから、この条項に該当します。そこで、「もとの語の送り仮名の付け方」がどうなっているかを見ると、「通則1、本則」に次のように定められています。

「活用のある語…(中略)…は、活用語尾を送る。」

「なげく」は、「なげかない」「なげきます」……と活用しますから、「なげ」が語幹で「く」が活用語尾。したがって、「く」が送り仮名。とすると「なげき」も「嘆き」と書くのが正しい、ということになります。
以上の議論からすると、やはり、「望蜀の嘆」は、「ぼうしょくのたん」と読んでおくのが正しい、といえるでしょう。

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