当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0017
「普」という漢字について、旧字体を載せている漢和辞典と、載せていない漢和辞典とがあるようですが、どうしてですか?

A

001701旧字体とは、当用漢字制定以前に標準的な字体として使われていた字体を指すのですが、実際に当時使われていた漢字を具体的に調べてみると、2種類以上の字体が使われていた例も少なくありません。
この「普」という字もその例です。この字は、中国で18世紀の初めに作られ、長く字体の規範とされてきた『康熙字典』では、私たちのよく知っている「普」になっています。ところが、たとえば戦前に出版された代表的な国語辞典『大言海(だいげんかい)』(冨山房)では、図のような字体が、一貫して用いられているのです。ここからすると、当用漢字制定以前には、「普」も両方使われていたと考えるべきでしょう。
そこで、当時、この両者のうちどちらが標準的な字体であったかは、漢和辞典編集者の判断によって変わってくるということになります。ちなみに、小社の漢和辞典では、「普」が標準的であったと見なして、当用漢字制定以前と以後で字体は変化していないと判断しています。その理由は、この字はもともと「並」と「日」とから成り立ってますが、「並」の旧字体は「竝」ですから、「普」を図のように書くのは、字源からするとあまり説得力がないからです。

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア