以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0007
漢字にはなぜ音読みと訓読みがあるのですか?
A
漢字はもともと中国語を書き表すために考案された文字ですから、中国語の発音しか持っていませんでした。漢字が元来持っていた中国語の発音を、日本人なりに聞き取って発音してみたのが、音読みです。中国語の「歩」は、日本人には「ホ」とか「ブ」とか聞こえたのでしょう。英語でたとえれば、walkという単語を「ウォーク」とカタカナそのままで発音するのと同じです。
ただし、中国語の発音は、時代や地域によって差があります。そこで、日本語としての漢字の音読みにも、いくらかの差が出てくることになりました。呉音・漢音・唐音などといって分類されているのは、この差に基づいているのです。
日本人が漢字を自分たちのことばを書き表す文字として用いようとすると、中国語の発音だけでは不便です。そこで、1つ1つの漢字に訳をつける必要が生じます。walkを「あるく」と訳すのと同じように、「歩」に「あるく」という訳をつけたわけです。こうして生じたのが訓読みです。訓読みは訳ですから、1つの漢字に対して1つとは限りません。「あるく」ではなく「あゆむ」という訳をつける人もいたわけで、基本的には訓読みは多種多様になる傾向があります。