以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0005
日本語を漢字で書き表すようになったのはいつごろですか?
A
埼玉県の稲荷山(いなりやま)古墳出土の鉄剣、と聞けば、受験勉強を思い出す方も多いことでしょう。日本史の教科書には必ず出てくるこの鉄剣は、5世紀ごろのものだと考えられていますが、これには115字の漢字から成る文章が刻まれていて、その中には固有名詞も含まれています。
このように日本の固有名詞を漢字で表記しているのは、日本語を漢字で書き表すようになった最初期の段階であると考えられます。日本語の文章そのものは、漢文(中国語)に翻訳して書き残すことも可能ですが、その中に出てくる固有名詞は、翻訳のしようがないからです。
では、そのような段階を越えて、日本語の文章そのものを漢字を使って書き表すようになったのは、いつごろのことなのでしょうか?
漢文(中国語)と日本語の文章とは語順が違いますから、漢字ばかりで書き表された文章でも、日本語の語順にしたがって書かれていれば、日本語を表記したものだと考えることができます。この観点から検討すると、日本語の文章全体が漢字で書き表されたといえる例は、7世紀ごろから現れるようです。
なお、日本の中での漢字の歴史を解説した書籍に、小社刊・小林芳規著『図説日本の漢字』があります。