以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0474
「鮮」の成り立ちを教えてください。
A
「魚」と「羊」が一緒にいる。これは、よっぽど変わった動物園か、よっぽど変わった食品売り場に違いありません。悩んでしまうのもごもっともです。
実際のところ、この漢字の成り立ちについては、学者の先生方もお悩みのようです。例によって定説があるわけではないのですが、大きく分けて2つの説があるようです。
1つは、文字通り「魚」と「羊」を組み合わせた会意文字であるとする説。ともに新しい肉でなくては食べられないところから、この2つを合わせて「新しい」「取れたての」という意味を表す、という説です。ただし、「牛」だって「豚」だって、できることならば新しいお肉でいただきたいものだなあ、と感じるのは、私だけではないでしょう。
もう1つは、この字の「羊」というのは、本来は「羊」を3つ書く図のような漢字の省略形だ、とする説です。この字の音読みはセンですから、「鮮」は、「魚」へんに音読みセンを表すこの字を組み合わせた形声文字だ、ということになります。この字は「羊のにおい」という意味で、そこで「鮮」は、においのする魚というところから、「なま魚」という意味を表すようになった、というのがこちらの説です。とはいえ、においを表したいならなにも「羊」でなくったって、と思ってしまうのは、やはり私だけではないでしょう。
どちらが正しいのかについては、学者の方々の研究にお任せすることにいたしましょう。いずれにしろこの漢字は、「においたつように新しい」という意味を基本として持っているようです。「新鮮」「鮮やか」といった使い方の奥底には、そんなイメージがあるのです。