以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0467
「莉」という漢字を漢和辞典で調べても、意味が載っていないのですが、どうしてですか?
A
そういうご質問、ときどきいただくことがあるんですよね……。
別に、漢和辞典に「莉」という漢字が載っていない、というわけではないのです。ただ、そこを読んでみても、「意味」が書いてあるような気がしないのだろうと思います。たとえば、小社『新漢語林』では、次のようになっています。
【字義】茉莉マツリは、香草の名。ジャスミン。
これだけです。「茉莉」の意味はわかったけど、「莉」の方はどこへ行っっちまったんだい?という人がいても、おかしくはありません。これは別に『新漢語林』だけの問題ではなくて、他社さんから出ているどの漢和辞典を調べてみても、似たようなものなのです。いったい、どうしてなのでしょうか。
それは、「莉」は単独ではほとんど意味がない漢字だからです。小社『大漢和辞典』を調べてみても、この漢字は、姓に使われることがあるくらいで、それ以外の単独の用例は示されていません。特に現代では、「茉莉」以外ではこの漢字は使わないと考えてよいでしょう。
Q0373でもご紹介しましたが、漢字の中には単独では意味を持たないものも存在しています。でも、だからといってこういった漢字の存在そのものに意味がないかというと、そんなことはありません。
他と結びつくことで初めて意味を持つなんて、なんとも控え目でおくゆかしい漢字じゃありませんか。つまらないことで出しゃばってしまう私としては、「爪の垢でも煎じて飲ませてもらえば」という声が聞こえてきそうです。