以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0424
先日、岡山の児島周辺をドライブしていたら、「嵶」という地名にぶつかりました。読み方と由来を教えてください。
A
漢字の世界には、「方言文字」と呼ばれるものがあります。ことばの「方言」のように、主としてある地域のみでしか流通していない漢字のことです。
「嵶」は、そんな方言文字の中でも、有名なものの1つです。読み方は「たお」「たわ」で、意味としては「とうげ(峠)」と同じです。主に岡山県内の地名に使われる方言文字です。
この字の由来については、『日本語の現場第2集』(読売新聞社会部編、1976年)の中に、地名学者の鏡味明克(かがみあきかつ)先生の説が次のように紹介されています。
「山の傾斜の弱いところ」という発想と「嫋」の訓読みである「たおやか」の発音が「峠」の方言「たわ」に近いところから、女へんを山へんにしたものらしい。一種のシャレ文字だろうという。
中国地方の方言では、峠のことを「たお」「たわ」と言うそうですが、このことばを表す漢字には、「嵶」のほか、「乢」「垰」などもあるそうです。いずれも方言文字ですから、もちろん日本で作られた国字です。
いっとき、渋谷の女子高生の間で方言がブーム、なんて騒がれたことがありました。女子高生のみなさん、だったら次は、方言文字でもブームにしてやってくださいませんかねえ。