以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0396
「滑(すべ)る」という漢字には、なぜ「骨」が付いているのですか?
A
漢字の字源というものは、いつものことながら、諸説が入り交じっていてなかなかはっきりしたことの答えられないものです。ただ、この「滑」については、「骨」という字に「なめらか」という意味がある、という点で、多くの説が一致しているようです。それに、水を意味する「さんずい」がくっついたのがこの漢字だ、というわけです。
問題は、「骨」がどうして「なめらか」という意味を持つのか、という点です。いくつかの字書を調べてみると、「骨」とはもともと関節のことを表す漢字で、関節はなめらかに動くから、という説が有力ではあるようです。しかし、関節ではない部分の骨だってたくさんあるわけで、どうもこの説、すなおに納得するわけにはいかないようにも思います。
また、「骨」の字源については、「月(にくづき)」が含まれていることから、この字の本来の意味は、「骨付き肉」ならぬ「肉付き骨」なのだ、という説もあります。この説は、なかなかリアルでおもしろいのですが、「なめらか」との関係については答えてはくれません。
理由はどうあれ、「滑」に「骨」が含まれているのは、意味深ではあります。だって、華やかに氷の上を「滑走」しようと、気持ちよく大空を「滑空」しようと、そこにあるのは常に「骨」なのだ、というのは、お正月に髑髏(どくろ)を掲げて歩いたという一休和尚も顔負けの、冷徹な現実ではありませんか。