以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0393
「要項」と「要綱」とはどう違うのでしょうか?
A
「実施要項」なのか「実施要綱」なのか、「開催要項」なのかはたまた「開催要綱」なのか?現実問題として考えると、どちらも使用されていて、どっちでもいいようにも思えますが、ここは、漢字の意味という視点から、じっくりと考えてみることにしましょう。
「要」という漢字は、この2つの熟語に共通していますから、違いがあるとすれば、「項」の「綱」の違いでしょう。「項」の方は、ごくごく普通に目にする漢字で、「項目」「条項」の「項」です。本来の意味は「うなじ」ですが、ここでは、比較的短い文章のまとまり、というイメージでとらえることができるでしょう。
一方の「綱」もよく見る漢字ですが、「要綱」という熟語に即して意味を考えるとなると、ちょっととまどうかもしれません。私たちがよく知っているのは「横綱」「綱引き」の「綱」、「つな」という意味での用法です。しかし、この漢字は本来、「つな」は「つな」でも「太いつな」「大きなつな」を表しています。そこから転じて、物事の根本となる重要なもの、という意味で使われることがあるのです。
そこで、「項」は細かい方、末端の方へと進んでいくイメージがあるのに対し、「綱」の方は根本の方へ向かうイメージがあると考えることができます。
とすると、「要項」は必要とされることがらの細目、「要綱」は根本となる重要なことがら、という意味になると思われます。つまり、「要綱」が根本にあって、それを実現するための細目が「要項」になる、というわけです。抽象性が高いのは「要綱」、具体性が高いのが「要項」とも言えるでしょうか。
しかし、最初にも申し上げたように、実際には両者は混同されていて、「要項」の意味で「要綱」を用いることも多いようです。具体性がモノを言う現実世界の前には、物事の根本を担う「綱」も、だいぶ格下げされてきているのでしょうか。