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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0195
「秘訣」の「訣」という字を辞書で調べると、「わかれる」という意味だと書いてあります。そんな字がどうして「秘訣」という熟語に使われているのですか?

A

「秘訣」という熟語は、思いのほか由緒正しいことばで、『大漢和辞典』を調べると、8世紀、中国を代表する詩人の1人、杜甫(とほ)の作品に用例があるようです。そして、そのころからすでに、現在と同じように、「人に知られていない重要な方法」という意味で使われていたようです。
一方、「訣」という字はご質問にあるとおり「わかれる」という意味で、「訣別」とか「永訣」とかいう熟語は、その意味でこの字が使われる例です。しかし、この字には「言」べんが付いていることからもわかるように、ことばに関係する意味があります。「別れのことば」という意味があるのです。
中国の古典の1つ、『列子(れっし)』というおもしろい書物に、ある占い師の話が出てきます。その人は死に臨んで、自分の子どもに占いの「訣」を伝えたのですが、子どもの方はその占いの方法を覚えてはいたけれど、実行してもうまくいかなかったそうです。ところが、その子どもからその方法を教えてもらった人が実行してみると、うまくいった、というのです。
この本がいつごろ書かれたのかについては定説がないのですが、少なくとも杜甫よりは数百年以上前であることは確かです。そして、ここでの「訣」の使われ方は、「別れのことば」という意味と、「人に知られていない重要な方法」という意味の両方が重なっているように読むことができないでしょうか。
もしかすると、「秘訣」というのは、人と別れるにあたって、それも死別するにあたって伝える、とても重要なものだったのかもしれません。

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