以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0039
「親が切る」と書いて、どうして「人に優しい」ことなのですか。「大きく切る」と書いて、どうして「大事」の意味になるのですか?
A
たしかに考えてみれば「親切」とは「親が切る」と読めますね。そこからすると、夕ご飯の支度のために大根を切る優しいお母さんの姿か、はたまた、ホラー映画にでも出てきそうな、包丁を持った残酷な親の姿を想像してしまいそうです。
実は、「切」という漢字には、ある漢字の下に付いて「非常に~~である」という意味を表す働きがあります。つまり、「親切」の場合は、「非常に『親』である」という意味になるのです。そしてこのときにもう1つ重要なのは、「非常に~~である」の「~~」の部分には、日本語ではふつう、動詞や形容詞が入りますから、「○切」の「○」の漢字も、動詞や形容詞として理解しなくてはいけないことです。つまり、「親切」の「親」とは、「おや」ではなくて、「したしい」「したしむ」という意味なのです。
というわけで、「親切」という熟語は「非常にしたしくする」という意味になります。同様の熟語としては、「痛切」「哀切」「適切」「懇切」などがあります。
ちなみに「大切」の場合も、同じように理解してよいとは思いますが、このことばは中国の古典には見あたらない、和製漢語のようです。『日本国語大辞典』(小学館)によれば、その意味も時代によっていくぶん違うようですから、単純な理解は禁物かもしれません。