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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0036
「利益」には、「リエキ」と「リヤク」の2つの読み方があって、意味も違うようですが、どうしてそんなことになっているのですか?

A

日本語とはまったくやっかいな言語でして、同じ表記なのに読み方が違い、意味も微妙に違ってくるという、困ったことばがあるのです。「利益」もその1つで、「リエキ」と普通に読めばなんてことはないごくフツーのことばですが、「リヤク」と読むと、仏様や菩薩様が人にさずける徳を意味する、ありがたーいことばとなるのです。
問題は、どうしてそんなことになっているかなのですが、Q0007で触れたとおり、漢字の読み方にはその伝来の時期によって呉音・漢音などの違いがあります。
「利益」を呉音で読んだのがリヤク、漢音で読んだのがリエキです。この2つの読み方のうち、古いのは呉音の方で、「利益」ももともとは「リヤク」と読まれていたものと思われます。
呉音は後に漢音にとって代わられるのですが、その背景には、遣唐使から帰ってきた人など、中国語ができる人からみると、呉音はすでに時代遅れの発音となっていたことがあるようです。792年には、「今後は漢音を使うこと」という天皇陛下直々の命令が出ているくらいです。現代にたとえるならば、「今後、ネイティブの発音ができない人は英語をしゃべっちゃだめ」という法律ができるようなものでしょうか。
このように日陰者扱いされた呉音ですが、命令や法律で根絶やしにできるほど、ことばというものはやわなものではありません。その後も呉音は生き延びつづけるのですが、その主な舞台は、仏教の世界だったといわれています。お坊さんたちは、呉音を使い続けたのです。留学経験のある若者を向こうに回して、日本語なまりの英語をしゃべりつづけるおじさんたちのイメージでしょうか。
そこで、現在、呉音で読む熟語には、仏教関係のことばが多いといわれています。「利益」のように、仏教用語として特殊な意味合いを持つようになったことばは、このようにして生まれたのです。

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