当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0458
お酒の「かん」を意味する漢字は「燗」ですが、この「月」を「日」と書いたら間違いですか?

A

045801図のような違いですね。ご質問をくださった方によれば、なにやらテレビ番組「平成教育学院」で、右のように「日」を書いて間違いにされたタレントさんがいらしたとのこと。うーん、困った、困った……。
漢和辞典に書いてあることを厳格に適用すると、左側の「燗」が正しい、ということになります。でも、だからといって「日」を書いては間違いかと言われると、そうも言いにくい、という事情があるのです。
「燗」から「火」を除いた部分、「門」構えの中に「月」を書く漢字は、実は「間」の旧字体にあたります。つまり、昔は「間」の「日」を「月」と書いていた、ということです。ただ、この2つは新字体と旧字体の関係とは言うものの、ずいぶん長い間、並立して使われていて、「簡単」の「簡」や「癇癪(かんしゃく)」の「癇」なども、「日」だったり「月」だったりするのです。
となると、「燗」だって、「火」へんに「間」と書いてもいいじゃないか、ということになります。実際、そう書いてある文献を見つけ出すことは、そんなに難しいことではないでしょう。しかも、この漢字は常用漢字には入っていないので、オフィシャルな意味での字体の根拠は、定められていないのです。そういう意味では、「日」と「月」のどっちを書いたところで、とやかく言われる理由はありません。
ただ、漢和辞典の世界では、伝統的に、「門」構えに「月」を書く方を正字としてきました。もし、「日」を書く方を「間違い」とするならば、それは漢和辞典にそう書いてあるから、としか言いようがないのです。間違いにされたタレントさん、ごめんなさい!
複数の字体がある漢字は、たくさんあります。その中でどれか1つ、「正しい」ものを選べ、と言われれば、そのときは漢和辞典に載っている正字をお答えいただいてかまいません。ただし、それ以外の字体を「間違い」であると言っているわけではないのです。そこのところをよくご理解いただければ、というのが、漢和辞典と日々取り組んでいる者の、ささやかな願いです。

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