当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0218
私の名前には「博」という字が入っているのですが、「専」と混用されて、いつも右上の点を忘れられてしまいます。そもそもこの2つの字には、どうして点のあるなしの違いがあるのですか?

A

ご質問をくださった方には失礼になってしまうのですが、この2文字、私もよく間違えたものです。小学校のころ、書き取りのテストでしょっちゅうバツをいただいた覚えがあります。
でも、何の因果か漢和辞典の仕事をするようになってから、そんな間違いはしなくなりました。それには、それなりの理由があります。
021801この2文字の旧字体を並べると、図のようになります。右上の部分をよく見てみると、まったく違う形をしていることが分かります。「博」の右上の部分は、もともと、「甫」という形をしていたのです。
「甫」は、現在では人名で使われることのある漢字で、音読みではホ、人名で「はじめ」と読むことがあります。これを含む漢字としてすぐに思いつくのは、「浦」「補」「捕」などですが、全て音読みはホです。つまり、これらの漢字では、「甫」はホという音読みを表す記号として機能しているのです。
「博」も、これらの漢字と同系列の漢字です。音読みはハクですが、古代中国へとさかのぼっていくと、「甫」「補」などと似た発音であったとされています。「博」のハクと「甫」のホとが、ともにハ行であることは、その名残なのです。
このことを知った上で、「甫」「補」などのグループの一員として「博」を覚えてしまえば、点を付け忘れることはありません。「専」は、音読みがセンで、ハ行グループの中には入りようがありませんから、こちらに点が付かないことも、いっしょにして覚えることができます。
このように、字源を知ることによって、漢字の形をしっかりと覚えることができることがあります。単なる知識ではなくて、役に立つ知識として、字源を活用していきたいものです。

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