当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0169
「凉」と「涼」は、同じ漢字でしょうか? それとも、別の漢字でしょうか?

A

この2つの漢字について漢和辞典を調べてみると、両者は異体字の関係にある、ということで諸書一致しています。つまり、読みも意味も同じである、ということです。一般によくつかわれるのは「さんずい」の方の「涼」ですから、「にすい」の「凉」はその俗字にあたる、という言い方もよくされます。
「さんずい」と「にすい」は、形もよく似ているので、よく混同されます。しかし、意味の上から厳密に考えると、もともとは違う意味のことが多いのです。たとえば「清」という漢字の「にすい」バージョンもありますが、そちらは「すずしい」とか「つめたい」とかいう意味で、「きよらか」とはちょっと違います。また、「冷」という漢字の「さんずい」バージョンもあるのですが、これは「澄む」という意味で、「つめたい」とはだいぶ違います。これらから推測すると「凉」と「涼」の間にも意味の違いがありそうなものですが、これは両者とも「すずしい」という意味で、全く同じと考えてよい、珍しい例だといえそうです。
しかし、だからといって「凉」と「涼」が「同じ漢字」なのかというと、問題は少しむずかしくなります。つまり「同じ漢字」とは何なのか、という問題があるのです。見かけが少しでも違えば「別の漢字」だ、という立場に厳密に立つと、手書きで漢字を書く場合、なぞらない限り完璧に同じ形の字を書くことは非常に困難ですから、「別の漢字」だらけになってしまいます。そこで、見かけがどこまで違うと「別の漢字」だと認定するのか、という線引きの必要が出てきます。このあたり、考え始めるとドツボにはまってしまう、頭のイタ~イ問題です。
ドツボは回避するとして、「凉」と「涼」の場合に限って考えてみると、これらは「にすい」と「さんずい」という、明らかに違う要素を含んでいますから、「読みも意味も同じだけれど別の漢字」としておくのがよいのではないかと思います。

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