以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0166
「夏」という字の「夂」は、1画目の書き始めが上の「目」にくっついているのが、正しい書き方なのでしょうか?
A
「夂」の形の書き方については、以前、Q0116でもご説明したのですが、ご質問が多いので、詳しい説明はそちらをご覧いただくこととしつつ、もう1度取り上げておくことにします。
たしかに、「後」や「夏」の「夂」について、1画目の書き始めが上にくっつかなくてはならない、とする考え方は存在します。私がいつも参照しているのは、藤原宏編『新版漢字書き順字典』(第一法規)という本なのですが、この本でも、そのような説明がなされています。元文部省視学官の藤原先生にはまことに失礼ながら、該当部分を図版として掲げさせていただきます。
問題は、この図の朱書きの部分についてということになりますが、この本の「本書の内容と使い方」には、この朱書きの部分について、「漢字を楷書で手書きする場合、朱書きで示した事項には特に留意して書くようにするとよいと思われます。」と書いてあります。これだけを読むと、朱書きどおりに書かないといけないようにも受け止められますが、これには続きがあって、次のようになっています。
「朱書きの箇所は、以上のような趣旨で示したものであって、文字の正誤の表示ではありません。ですから、この留意事項のとおりに書かないと、誤字になるという趣旨のものではありませんので、くれぐれもその点に留意して児童の学習の際活用していただきたいと思います。」以上のように、「後」「夏」の「夂」の1画目が上にくっつくかどうかは、文字の正誤の問題ではありません。あくまで、字形のバランスを取って、美しい字を書くためには気を付けた方がよい、というレベルのものです。そのあたりを十分にご理解いただければと存じます。