以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0165
「年齢」を「年令」、「○歳」を「○才」と書くことがありますが、正式にはどうなのでしょうか?
A
小社『明鏡国語辞典』には「表記」という欄があって、書き表し方に関する情報を簡単明瞭に解説してあります。そこで、早速、「ねんれい【年齢】」の項目を調べてみますと、その「表記」欄に「小学校では学年配当の関係から『年令』で代用する。」と書いてあります。また「さい【才】」のところにも同様の記述があります。
もうちょっと噛み砕いてご説明しておきましょう。小学校で学習する漢字は、一般に教育漢字と呼ばれていますが、「齢」も「歳」も、この教育漢字に入っていないのです。しかし、「年齢」も「○歳」も、実生活のさまざまな場面で頻繁に使用しなくてはならないことばです。そこで、「齢」は、4年生で学習する「令」の字を代わりに用い、「歳」は、2年生で学習する「才」の字を代わりに用いることにしよう、というわけです。
つまり、「年令」も「○才」も、きちんとした漢字を学習するまでの間の仮の書き方だといえます。「齢」も「歳」も常用漢字ですから、遅くとも中学校を卒業するまでには学習するはずです。それ以後は、やはり、「年齢」「○歳」と書くのが、オトナだということになりましょう。
ただし、「年令」「○才」という書き表し方が、教育漢字の制定によって生まれた、完全に子ども専用のものであるかというと、そうでもありません。『大漢和辞典』の「才」の項には、日本では「歳」の略字として用いる、というような説明があります。『大漢和辞典』の基礎的な部分は教育漢字の制定以前に編集作業が完了していますから、「○才」という書き表し方は、それ以前から存在していたことになります。おそらく「年令」についても、略字としては、古くから存在していたのではないでしょうか。
とはいうものの、それはあくまで手書きの略字の場合に限ってであったろうと思われます。正しいオトナはやはり、「○歳」を使った方がよいだろうと思われます。