当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0164
『康熙字典』の親字の中には、版によって字形の違うものがあるようなのですが、どうしてですか?

A

スルドイですね!お気づきのとおり、『康熙字典(こうきじてん)』にはいくつかの版があります。最初に完成された1716(康熙55)年のもののほか、1827(道光7)年にも出版されていますし、日本でも、篆刻家・読本作者として名高い都賀庭鐘(つがていしょう)が1780(安永9)年に出版した校訂本、1885(明治18)年の序がある渡部温(わたなべおん)の訂正本(現在、講談社から出版)などがあります。
当時の印刷術といえば基本的に木版刷りですから、これらの諸本は、ご丁寧なことにそのたびに1ページずつ版木に彫り込んで印刷されたものと思われます。活字母型が流用できる活版印刷や、文字データを流用可能なコンピュータ印刷とはわけが違うのです。従って、版木を彫り直すたびに、なんらかの相違点が出てくるのは、どうしようもありません。
016401図は、「檀」という字について、道光版・都賀版・渡部版を並べてみたものです。こうやって並べてみると、それぞれの字体に特徴があるだけではなく、右下の「旦」の部分が、道光版と都賀版では、限りなく「且」に近い字形になっていることがわかります。『康熙字典』の各版の間には、時には、このような重大な違いがあることもあって、いろいろと悩ましいことも多いのです。
そこで、現在、『康熙字典』について語る場合は、これらのうちの道光版を基準にしていることが多いようです。中国で出版されている『康熙字典』も、多くは、道光版に拠っているようです。

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