当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0108
「学」という漢字の「冖」の最後のところは、すぐ左下に小さく「はねる」のでしょうか? 左下に少し長めに「はらう」のでしょうか?

A

このコーナーを始めて以来、みなさんが漢字の微妙な部分をとても気にしていらっしゃることが、ひしひしと実感されてきているのですが、それにしても、このご質問は、最大級に微妙なご質問ではないでしょうか。
ご質問の主旨は、せんじつめれば、「冖」の最後、折れ曲がった後の「長さ」の問題ではないかと思います。そして、これまたせんじつめてお答えするならば、例によって、その「長さ」によって別の字になってしまうことがない以上、適当でかまわない、というお答えになります。
しかし、毎回、こんなお答えでは、納得しない方も多いでしょう。そこで、ちょっと別の角度から、この問題を考えてみます。
010801図は、中国の明(みん)王朝の時代(15~17世紀)に書かれた2種類の「学」の字です。ともに少しくずした字体になっていますが、問題の部分は、左の字の方が短く、右の字は長くなっています。右の字をじって見つめていると、問題の部分が長くなっているのは、次の「子」の最初とつながっているからだということに気づきます。つまり、漢字の画の長さや方向といったものは、その前後の画との関係も考慮しなくてはいけない、ということなのです。
「学」の問題の部分の場合、ここをあまり「短くはねる」と意識してしまうと、次の「子」の最初の画へスムーズにはつながりません。しかし、「長くはらう」という意識が強すぎると、字形が判然としなくなるおそれがあります。「学」のように単純な字形だとそういうことはあまりないのですが、「覚」「営」などになってくると、「長くはらう」ことによって、他の部分と重なってしまうおそれさえでてくるのです。
そこで結局は、次の画へスムーズにつながりつつ字形がはっきりと保てるような適度な長さ、というのがよろしいのではないでしょうか。これは、「正しい漢字」を書くためというよりは、「美しく見やすい漢字」を書くために重要なことだと思います。

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