以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0030
「茸」という字の「耳」の部分で、左下からやや右上へと書く横棒は、右側の縦棒の先まで突き出るのですか?
A
「耳」という字はもともと耳の象形文字ですが、別にピアスをした耳の絵が元になっているわけではありませんので、この部分が突き出るかどうかというのは、純粋にデザイン上の問題です。
多くの活字では、「耳」という字単体の場合は、この部分は突き出ています。しかしご質問の「茸」や「聞」「聴」「聖」などのように、「耳」という字を構成要素として持つ漢字の場合には、この部分が突き出るか突き出ないかはさまざまです。大雑把にいって、「耳」の右側になにか別の構成要素がある場合には突き出ない、右側にはなにもない場合は突き出る、というふうに分けているケースが多いようですが、例外も少なくありません(『康熙字典』や『大漢和辞典』では、後者の場合も突き出ない形が多いようです)。
『大漢和辞典』には、図のように「耳」を2つ並べた字もあって、その場合に右の「耳」は突き出る、左の「耳」は突き出ない、とするのも、左右がふぞろいなようで、妙な気もします。ちなみにこの字は、「二つの耳の人首に在るを示して、至って安穏なる意を表はす」のだそうです。
「耳」のこの部分に関しては、突き抜けた先を払うか、止めるか、という問題もあって、細かい部分を気にしはじめると、いやになってきてしまいます。いずれにしろいえることは、この部分が突き出たからといって誤字になるわけではありませんし、逆もまた同じだ、ということです。あまり細かい部分にこだわりすぎてはまってしまうのは、よしておいた方が賢明でしょう。